~第18回~ 管楽器奏者の強い味方「上手楽器」
北野天満宮近くに店を構える上手楽器の歴史は、半世紀を超える。リペアマン(修理技術者)が常駐する、京都でも数少ない楽器店だ。2階の修理コーナーでは、リペアマンの西にしべ部佑一さんが、細かな部品の一つ一つを真剣な眼差しで点検していた。
上手楽器では、プロ奏者の楽器メンテナンスから、学校等の吹奏楽部の出張修理まで、幅広く受け入れている。学校での出張修理は、できるだけ生徒に修理の様子を見てもらい、一緒に仕上がり具合を確認する。「今まで音を出すのに苦労していたのに、少しの調整で楽器の吹きやすさ、音の伸びが全然違う!」。生徒たちからの「ありがとう」が、長時間に及ぶ修理作業の疲れを吹き飛ばす。
「楽器を演奏することは、楽器を育てることと同じです。例えば、ペットに毎日えさをあげ、毛づくろいをし、体調に変化があれば病院に連れていく。それと同じで、楽器にも日々お手入れが必要です。僕らは、そのお手伝いをしたいんです」。こう話すのは、上手優人さん。創業者、上手稔さんの孫であり、彼もリペアマンだ。繊細で精密な構造の管楽器は、突然音が鳴らなくなることもあり、親身になって修理してくれる彼らはとても頼もしい存在だ。
初めて楽器を購入する際も、奏者の年齢やどれくらい楽器を続けたいかという希望にぴったり合う楽器を提案してくれる。演奏を続ける中で、「少しでも楽器に違和感があれば気軽に相談してほしい」と優人さん。
「奏者の一番近くに寄り添う楽器屋」を目指し、若きリペアマンたちの奮闘は続く。
松村香代子(2021年8月10日取材)掲載:こごみ日和89号
▶上手楽器